【連載】多発性硬化症の人のための新型コロナウィルス(感染症)対策
第3回 感染症を防ぐには(その1)
<この文章は、2020年4月12日時点の情報をもとに書かれています>
第1回 多発性硬化症の人のための新型コロナウィルス(感染症)対策
第2回では、感染症と再発、治療薬についてご説明しました。
今回は、ウィルスや細菌がどうやって体に入るのか(感染するのか)を整理して、感染症を防ぐ方法を考えたいと思います。
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新型コロナウィルスをはじめとするウィルスや細菌に感染するには、感染源(ウィルス)+感染経路+宿主(あなた)の3要因が必要です。言い換えると、このどれかを無くせば、感染はしないことになります。
宿主(あなた)を消滅させることはできませんので、感染源(ウィルス)と感染経路を何とかすることを考えます。
感染経路
ウィルスが付着したものを触ると、ウィルスが手につきます。その手を口や鼻、目を触ることでウィルスが体に入り感染します。接触感染と言われます。
ウィルスに感染した人がくしゃみや咳、おしゃべりなどをすると、ウィルス入りの唾液や鼻水などの飛沫を周囲に出します。普通の会話でも1メートルほど、咳やくしゃみでは2メートルほど飛ぶと言われています(周囲がびっくりするくらいのくしゃみをする人は、もっと飛距離があります)。これを吸うことで感染します。飛沫感染といいます。
接触感染では、手がウィルスを口や鼻まで運ぶ主要な感染経路です。手をこまめに正しく洗うことで、感染経路を遮断できます。多発性硬化症国際連合が言うところの、
・Wash your hands frequently with soap and water or an alcohol-based hand rub
(石鹸と水、アルコールで手をいつもきれいに)
・Avoid touching your eyes, nose and mouth unless your hands are clean
(目、鼻、口を触るときは手を洗ってから)
がそれにあたります。
新型コロナウィルスは、プラスチックのようなつるつるした表面上では、少なくとも1日以上は生きているという報告がありますので、たくさんの人が触った部分を手で触れて、そのまま口や鼻を触ることは、接触感染の典型的な経路となります。
マスクはウィルスがついた手で口や鼻を触らないようにする効果が期待できます。人は無意識のうちに頻繁に顔を手で触っています(ある研究では、1時間あたり23回触っていたという結果でした)。
また、手をきれいにすることはとても重要ですが、正しい方法で洗わなければ、きれいになりません。
当院看護師による正しい手洗いを動画にしましたので参考にしていただければと思います。
ウィルスは、体内でしか増殖しません。手に付着しても正しい手洗いで洗い流したり、アルコールなどで消毒することができれば、新たに付着しない限りそれでおわりです(ちなみに細菌は自分で増えることができます。手を洗っても無菌状態にはなりませんので、時間がたてば手の上で増殖します)。
たくさんの人が触ったところを触ったり、マスクの表面を触った後に手洗いをして、また、顔を触る時は手がきれいかを意識して、接触感染を予防しましょう。
次回は飛沫感染についてご説明します。
つづく
文:医療法人セレス神経難病学習センター
監修:深澤 俊行(さっぽろ神経内科病院 院長)